高静水圧下における処理(加圧処理)によるタンパク質溶液のゲル化を利用して安全かつ高品質なゲル状食品の開発が可能となると考えた。そこで試料としてオボアルブミン(OVA)溶液を用い、食品のパラメーターとして重要であるフレーバーとテクスチャーに及ぼす加圧ゲル化の影響を調べ、加熱ゲルとの比較検討を行った。フレーバーリリースは処理圧力の増加に伴い抑制されたが、官能基間で抑制傾向が異なり、特にアルデヒドでは最も大きく抑制された。また官能基の種類に関わらず、短鎖化合物よりも長鎖化合物において抑制された。塩の添加は加圧ゲルのフレーバーリリースには影響を及ぼさなかったが、かたさや付着性の増加に寄与しており、その添加効果は1価よりも2価の塩で大きいことがわかった。また、糖の添加では加圧ゲルのフレーバーリリースに影響はなかったが、加圧ゲルのかたさは増大した。しかし付着性、凝集性には寄与しなかった。同程度のかたさに調整した加熱ゲルと比較すると加圧ゲルの方がフレーバーリリースは大きくなった。またフルクトオリゴ糖、キサンタンガム添加についても同様に加圧ゲルの方がフレーバーリリースは大きくなった。また、凝集性および付着性については加圧ゲルのほうが低かった。大腸菌および酵母に関しては加圧処理においても十分な殺菌効果が得られた。 以上の結果より、加圧処理はOVA溶液のフレーバーリリースを抑制し、600MPaでゲル化させた。塩及び糖の添加により、加圧ゲルのフレーバーリリースを変化させることなくテクスチャーを改質することが可能であることが明らかとなった。またこうして作製できる加圧ゲルは加熱によるゲルとは異なる特徴を持っており、香り立ちが良く、高齢者向けの特別用途食品に有利である事がわかった。今回の研究によって、高圧処理による新規な風味及び食感を呈するゲル状食品の創製のための基礎知識が得られた。
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