病態発症の危険因子及び抑制因子の両方向から、マルチプルリスクファクター疾患遺伝子の検索をモデル動物を用いたin vivo実験により行った。その結果、脂肪組織から分泌されるアディポネクチンが、マルチプルリスクファクター症候群の主要病態である脂肪肝やインスリン抵抗性の発症と改善に深く関わっていることが明らかとなった。そこで食事性insulin sensitizerで、アディポネクチン産生を亢進するドコサヘキサエン酸を構成脂質として含む海洋資源由来フォスファチジルコリン(DHA-PC)を用いて、肥満モデルOLETFラットを用いた病態生理学的検討を行った。特に脂質代謝脂質代謝の中心臓器である肝臓において、DHA-PC摂取に対するOLETFラットの応答を遺伝子発現変動で評価した。まずDHA-PCを摂取したOLETFラットでは、内臓脂肪と肝臓脂質の蓄積が改善した。その作用機序としては、血中のアディポネクチン濃度上昇により肝臓における脂質合成酵素活性及び遺伝子発現の抑制が認められ、また脂肪酸分解系酵素活性及び遺伝子発現の亢進も認められた。それらの変動は転写因子のうち、脂質合成系を制御するSREBP1cおよび脂質分解系に関与するPPAR deltaの発現変動を介していることが示唆された。 よって本研究により、アディポネクチンの血中濃度を食環境で制御することはメタボリックシンドローム発症の予防・改善に有効であることが示された。
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