研究概要 |
まず、昨年度見出したコショウ中のTRPV1活性化成分について、ヒトTRPA1に対する活性化能を、TRPA1をHEK細胞に異所的に安定的に導入した細胞と、細胞内カルシウム濃度の指示薬Fluo-4および分注機能付傾向マイクロプレートリーダーFlexStation II (Molecular Device)を用いて、セル・ベース・アッセイにより検討した。コショウ成分19種を用いた結果、TRPV1活性化能の見られた化合物は概ねTRPA1を活性化した。TRPA1の特異的阻害剤により細胞内カルシウム濃度の上昇が抑えられ、かつTRPA1を発現していないHEK細胞ではカプシ有無濃度の上昇がみとめられなかったことから、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇はTRPA1を介したものであることが明らかとなった。用いた化合物の中で、N-イソブチルー(2E, 4E)-テトラデカ-2,4-ジアミドだけは、TRPA1のみを活性化した。コショウ中にTRPV1だけでなくTRPA1を活性化する成分も見出されたことから、次に、高脂肪高ショ糖食で肥満を誘発する系に、黒コショウまたはコショウ辛味成分ピペリンを添加して、体脂肪蓄積や血液成分への影響を検討した。脂質エネルギー比48%、ショ糖エネルギー比25%の高脂肪高ショ糖食に、0.03と0.05%のピペリンまたは1%の黒コショウを添加した食餌を、マウスに1ヶ月間ペアフィーディングにて与え、体重、各臓器重量、各血清パラメータを測定した。ピペリンまたは黒コショウの添加は体重にはほとんど影響を及ぼさなかったが、内蔵脂肪の蓄積を低減した。また、肩胛骨間褐色脂肪組織中のUCP1量の増大をもたらした。さらに、黒コショウの方が、ピペリンよりもこれらの効果が強いことが明らかとなった。また、マウスのTRPM8遺伝子の取得と細胞での一過的発現に成功した。
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