研究概要 |
リン脂質分子を固定相に持つ特殊なカラム(Immobilized Artificial Membrane:IAMカラム)を用いてHPLC分析を行い、その保持時間からポリフェノール類とリン脂質との親和性を簡便に解析できる系を構築し、カテキン類(EC,EGC,ECg,EGCg)及びメチル化カテキン類(EGCg-4'OMe,EGCg-3"OMe,EGCg-4"OMe,EGCg-4',4"diOMe)のリン脂質親和性を数値化した。EGCg-4"OMe及びEGCg-4',4"diOMeは、EGCgをメチル化して合成した。各カテキン類及びメチル化カテキン類についてIAMカラムを用いてHPLC分析し、得られた各ピークの保持時間(t_R)を式K_<IAM>=(t_R-t_0)/t_0に代入して、K_<IAM>値としてリン脂質親和性を算出した(t_0はIAMカラムに保持されない物質の溶出時間)。カテキン4種類の分析の結果、リン脂質への親和性の強さはK_<IAM>値が大きい順にECg>EGCg>EC>EGCとなり、リポソームへの取り込み量やn-octanol/PBS系での分配係数の結果と強い相関を示した。このことより、化学構造の違いによるカテキン類の疎水性の強弱がリン脂質膜への相互作用の違いを決定づけていることが示唆された。しかし、メチル化カテキン類にはカテキン類で見られた相関性が得られなかった。従って、メチル化カテキン類とリン脂質膜への相互作用には疎水性以外の要因(立体構造やリン脂質分子との安定性)も関与していることが推測された。従来のリポソームを用いた系では、実験操作が煩雑であり、多量の試料が必要であったが、本法は少量の試料で簡便にリン脂質膜に対する親和性を測定することが可能であり、他のポリフェノール類や食品成分とリン脂質膜との親和性評価にも応用できると期待される。
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