研究概要 |
カルボニル化合物はタンパク質と反応し、様々なグリケーション後期段階生成物(AGE)を生成する。研究代表者らはグリセルアルデヒドの関与するメイラード反応で生成するAGEとして、グリセルアルデヒド由来AGEであるGLAPと、グリセルアルデヒドおよびメチルグリオキサール由来AGEであるMG-H1とアルグピリミジンを報告した。今年度はグリセルアルデヒドの関与するグリケーションで生成する架橋性AGEの化学構造を解析した。実験方法はグリセルアルデヒドをN-アセチルアルギニン、N-アセチルリジンと生理的な条件化でインキューベートし、反応生成物を逆相系HPLCで精製し、機器分析に供した。結果として、すでに同定したMG-H1,GLAP,アルグピリミジンと未同定の生成物を単離・精製した。この未同定な化合物は蛍光を有する黄色化合物であり、FAB-MS,NMRにより2-(4-acetylamino-4-carboxy-butylamino)-5-(5-acetylamino-5-carboxy-penty1)-7-hydroxy-3,4-dihydro-pyrido[3,2-d]pyrimidin-5-iumと同定した。本化合物はグリセルアルデヒドの関与するグリケーションで生成する新規ジヒドロピリミジウム化合物であった。この化合物は糖尿病合併症の指標に成りうると考えられる。一方、グリセルアルデヒド修飾タンパク質がウイルス感染により発現するインターフェロン誘導遺伝子を下方制御することを見出した。このようなAGEの作用は、糖尿病患者が感染症にかかりやすくなる原因の一部となっていることが考えられる。
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