本年度は生理的条件下においてグリセルアルデヒド(GLA)とグアニジノ化合物、N^α-アセチルリジンから生成するAGEの化学構造を解析することを目的とした。さらにラット尿細管上皮株化(NRK-52E)細胞を用いてそれらのAGEの生理作用について検討した。 GLAとクレアチンとN^α-アセチルリジンの反応溶液から6種の主要ピークを検出し、そのうち1種は既知のAGEであるGLAPであり、その他のピークをCP0、CP1、CP2、CP3、CP4と命名した。CP0はMG-H1、CP3はArgpyrimidine、CP4はP4の類似体であった。CP0は反応の初期に増加し生成量が最も多かった。 さらに、CP0はNRK-52E細胞に対する細胞傷害性を示さなかった。従って、CP0はnon-toxic AGEであることが示唆された。グアニジノ化合物はタンパク質モデルのアルギニンより反応速度が速いため、生体内では、クレアチンを始めとした遊離のグアニジノ化合物が、タンパク質を構成するアルギニンより速く反応しイミダゾリノン化合物を生成すると推察した。一方、グリセルアルデヒドにより修飾されたタンパク質が、インターフェロンβにより誘導される感染防御遺伝子の発現を抑制することを見出した。このことから糖尿病患者の体内に生成・蓄積したAGEが、感染防御応答を抑制する作用を発揮しうることが示唆された。
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