研究課題/領域番号 |
19580157
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研究機関 | (財)東京都老人総合研究所 |
研究代表者 |
田中 康一 財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所, 主任研究員 (40101258)
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研究分担者 |
小林 悟 東京都老人総合研究所, 研究員 (20100117)
岩本 真知子 東京都老人総合研究所, 研究員 (40167284)
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キーワード | カルニチン / 生理活性 / 脳・神経 / 脳虚血 |
研究概要 |
加齢とともに罹病危険率が増加する脳血管性認知症は脳血管の梗塞、栓塞、出血等が原因となるが、現在までこれらの脳血管障害に対する的確な治療法が少なく罹病患者の予後も思わしくない。これらの脳血管性脳機能障害の予防方策および改善方策を探ることを目的としている。カルニチンは脂肪酸からのエネルギー産生に重要な働きをする生体物質である。脳も含めた体内カルニチンレベルは老齢で低下するが、カルニチンの補充が正常老化における神経機能や認知機能を活性化することのほかに、本生体物質が脳血管性認知症の原因となる脳虚血による神経細胞死を抑制する効果を有することも明らかにしてきた。本研究ではカルニチンのアセチル誘導体であるアセチル-L-カルニチン(ALCAR)の虚血傷害による神経細胞死抑制効果のほかに、虚血回復後の神経細胞回復への同生体物質の効果を初代培養神経細胞を用いて明らかにするとともに、その効果のメカニズムを明らかにすることを日標としている。 研究成果:胎生18日のラット胎児から調製した培養神経細胞を一定時間、低酸素・低グルコース状態に曝し、その後、脳虚血後の血流再開を模すために通常の酸素とグルコース濃度を含む培地で培養を続けた時の神経細胞生存に与えるALCARの効果を調べた。その結果、低酸素・低グルコース処理3日前から培養メディウムにALCARを添加することにより細胞内カルニチンレベルを上昇させると、神経細胞の低酸素・低グルコース暴露後の生存率が増加した。また、脳虚血後の血液再灌流をも下実験では、カルニチン補充細胞群ではカルニチン欠乏群に比べてグリア細胞の増殖が有意に増加した。これらの結果は、カルニチンが脳虚血時の神経細胞死を抑制し、かつ血流再開後のグリオーシスを促進することで脳梗塞等の外的傷害による脳傷害を抑制する有益な効果を有することを強く示唆するものである。老齢期には脳を含む全身の臓器組織のカルニチンレベルが低下することを報告しているが、老齢期にカルニチンを補充し脳のカルニチンレベルを上昇させることは脳梗塞等の脳虚血疾患による脳神経組織破壊の予防、回復に有効な手段であるといえる。
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