研究概要 |
本研究は,国有林の共同森林管理(JFM)を導入し,統計上は成功しているようにみえるインドにおいて,その実態とともに,JFMの拡大に果たす政府セクターの役割を明らかにすることを目的としている。 平成19年度は導入の遅れたアッサム州を調査対象とし,20年度は他地域に先駆けてJFMを導入し,林地の62.5%に適用しているマッディヤプラデーシュ(MP)州を選んだ。森林局関係者に対するインタビューからは,州の森林ではすでに資源調査がなされ,経営計画も策定されており,JFMの導入に際して必要な手続きはそれぞれの林小班の管理をどの集落に任せるかを決定することであり,集落構成員は自動的にJFM委員会の構成員となっていた。しかしJFM適用面積が飛躍的に拡大したのは世銀の援助が入ってからで,森林インフラストラクチャーだけでなく財政的支援も重要であること力弐わかった。 1980年森林保全法によりインドでは天然林に対する改変が原則として禁じられることになったが,MP州でも木材の生産活動は枯.死木や改良伐採など最小限に留められており,主要な生産物はむしろ非木材林産物(NWFP)であった。MP州に分布する落葉季節林は,州の森林副産物加工研究センターによると150種以上のNWFPを産しており,tendu(葉巻タバコの葉に利用)やmahua(花を食品や醸造に利用)などは指定少数民族にとって重要な換金作物となっている。またこれら葉,花,果実,樹脂は,材や樹皮と異なり生きた樹木からしか生産できず,森林保全に対するインセンティヴとなりえる点が,MP州におけるJFM拡大の背景のひとつであると考えられた。
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