研究概要 |
本研究においては,森林施業が山地流域における土砂生産特性に与える影響を定量的に評価することを目的として実施している。今年度においては,表層崩壊を起因とする土砂生産特性を定量的に評価することを主要な目的としたものである。解析対象地として宇都宮大学船生演習林を選定した。宇都宮大学船生演習林は,総面積約532haであり,ヒノキの人工林を主体として構成されている林分である。1998年の8月末に発生した集中豪雨(福島県南部,那須豪雨)によって各地で被害が発生したが,同演習林内においても本集中豪雨によって36箇所の地点で表層崩壊が確認されている。同演習林には10mメッシュのDEMおよび森林簿に対応した同サイズのメッシュデータが存在していることから,これを用いて検討を行ったものである。検討手法としては,物理則に準じた分布型表層崩壊発生モデルを用いたご。モデルの基本概要は表面地形による集水特性を組み込んだ定常型分布モデルである。本モデルは,対象地域を10mグリッドに区分し,降雨強度に応じた各グリッドにおける定常状態での地下水位を算出し,これによって無限長斜面安定解析を各グリッドで実施する構造をとるものである。検討の結果,林齢に応じた土質強度補強効果をグリッド毎に系統的に与えることによって,莫際の表層崩壊分布の推定精度が向上することが確認された。本実績は今後の人工林を主体とする森林管理計画を検討する上での基礎情報となるものであり,今後は森林植生が土質強度補強効果以外の要因(土層厚,透水特性等)が表層崩壊発生に与える影響を組み込み検討していく予定である。
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