カンバ類の癌腫病菌であるカバノアナタケIO-U1株に感染したシラカンバ幼植物体No.8に生成する、感染初期における菌感染特異的タンパク質の検出・同定を行った。その結果、菌感染した幼植物体No.8において、オキシダティブバーストと全身獲得抵抗性(SAR)機構が防御反応として生じていることが判明した。また、IO-U1株に感染した2種類の幼植物体No.8及び東北について、組織学・組織化学的観察を行った。その結果、菌感染した2種類の幼植物体において、フェノール性化合物の堆積とその重合物の堆積、及びスベリン化した壊死感染防御周皮の形成が、菌糸の生育を抑制していることが示唆された。続いて、ペルオキシダーゼのアイソザイム分析を行った。その結果、菌感染幼植物体においては、ペルオキシダーゼのアイソザイムが、フェノール性化合物の重合に、より特化していることが推測された。更に、全身獲得抵抗性(SAR)を誘導することが知られているサリチル酸を、幼植物体No.8に投与し、植物体内でSARが生じるかどうかプロテオーム解析を用いて調べた。その結果、サリチル酸投与により、幼植物体No.8内にSARが誘導されることが明らかになった。また、幼植物体No.8においては、カバノアナタケ菌による感染とサリチル酸投与の場合とでは、生じる抵抗性機構が異なることが示唆された。
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