研究概要 |
本研究課題は,湿地に生育する樹種を対象に,根系が水中に没したとき(湛水)あるいは全身が水中に没したとき(沈水)の樹体内の酸素の動態を微小酸素電極を使って実測し,その耐性機構を明らかにしようとするものである。 タイの湿地周辺に生育するSyzygium属樹種の幼樹を湛水条件で育成したところ,成長量などに指標される湛水耐性に,現地での分布に対応した樹種間差が見られた。より耐性の高い種を用い,根内の酸素分圧を計測できる微小酸素電極の作製に成功した。この電極を用いた実験により根圏をほぼ無酸素状態にしても根内には酸素が存在していることや,その酸素が周皮に作られた二次通気組織を経て地上部から送り込まれていることなどを定量的に確認した。 一方,Melaleuca cajuputi幼樹は沈水条件においても伸長成長するが,暗黒にすると成長せずに死亡していくことから,水中でも光合成を維持しエネルギーを獲得していることが示唆された。一部の葉の形態が気中葉とは異なる異形性を示すことが確認された。水中異形葉は解剖学的にも気中葉とは異なっていた。高木性の陸生植物でありながら,沈水条件に対して水生植物的な適応反応を示すことが明らかとなった。
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