1970年代以降の日本では、皆伐一斉造林による針葉樹人工林管理への批判が目立つようになる。政策史的にみると、19世紀末の欧州林学の思想が日本林政に影響を与えたと考えられる。19世紀の欧州林学は、共同体の林野利用と対立し、高林の成立を目指すなかで、アルプスの郷土樹種であるトウヒを他地域に造林することについては、その後地域により意見がわかれることになる。日本が、欧州林学のこうした歴史的背景を正しく理解してトウヒ一斉造林をモデルとしたのかどうか、考慮の余地がある。課題のダウンサイジングを図るため、山林監守人の国際比較を、フランス・北イタリア・ドイツ・ニュージーランド・日本について行った。資料の制約や歴史的条件の違いにより、ビュトゥーが行った19世紀における共同体有林監守人の性格変化と同等の比較はできなかったが、近代において形成された林学・林政と、共同体住民のインターフェイスというべき監守人について、その権限・見回り頻度、盗伐事件の調書件数、処遇、給与費用の地元負担割合などを比較することにより、欧州林学が共同体に対して及ぼした影響を具体的・実証的に比較することができることが示唆された。とくに日本の北海道とニュージーランドは比較可能であると考えられる。
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