研究課題/領域番号 |
19580167
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
久保 隆文 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (00015091)
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研究分担者 |
丹下 健 東京大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (20179922)
船田 良 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (20192734)
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キーワード | ブナ / 地理的変異 / 木部通道組織 / 水分生理特性 / 環境応答 / 葉形態 |
研究概要 |
前年度に引き続き、全国の植生地から集められ、東京大学秩父演習林(埼玉県秩父市)に植栽されているブナ(Fagus crenata)について、(1)葉の形態(サイズ・葉面積)および気孔形態(大きさ)と分布(密度)、(2)蒸散および気孔コンダクタンス、(3)道管の形態、分布、占有割合(樹心からの各年輪)、(4)葉緑体等の遺伝特性を調べ、地理的変異に由来するブナの水分生理および木部通道組織の環境応答特性を検討し、相互の関連性や地域の気候との関連性を明らかにした。 (1)については、前年度に明らかにした葉の厚さの地理的特性を再確認したが、葉の形態特性の中で葉の大きさ(面積)が地理的特性を示すとする従来の見解と異なる新しい知見を得た。(2)地理的特性が確認された蒸散速度や気孔コンダクタンスは葉の厚さ、さらには気孔密度との高い相関関係が認められ、これらの組織形態的特性が水分生理的特性に影響していると推察された。(3)については、水分生理特性が通道組織である道管要素の組織形態と密接な関係にあるとの予想の基に、それぞれの関連性を詳細に検討した。この結果、産地による地理的特性が確認された道管要素の数(単位面積当たり)や占有面積率は蒸散速度や気孔コンダクタンスと明瞭な相関性が認められた。しかし、地理的特性が見られなかった道管の大きさに関しては有意な関係は見出せなかった。(4)については、測定技術の確率を目途に鋭意検討したが、具体的な結果には至らなかった。 地理的特性が認められた葉や道管の組織形態や水分生理特性について、各地域の気候(気温、降水量)との関連性を調べた結果、冬の降水量が密接に関係していることが明らかになった。冬場の積雪量が葉の厚さや道管の分布に影響し、さらには水分生理地理的特性に影響を及ぼしたと考えられる。
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