研究課題/領域番号 |
19580172
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 武文 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (60212148)
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研究分担者 |
岩瀬 剛二 鳥取大学, 農学部, 教授 (60444642)
梅澤 俊明 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80151926)
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キーワード | Laccaria bicolor / シュウ酸 / クエン酸 / リンゴ酸 / リン / 酸性土壌 / 外生菌根菌 / 荒廃地造林 |
研究概要 |
樹木の根に共生する外生菌根菌は、キレート作用を示す有機酸を分泌し土壌中の難水溶性リン酸塩を可溶化させる。その作用により、宿主樹木は、根より広い範囲からリンを獲得でき、樹木のリン欠乏が防止されている。本研究の目的は、菌根菌による難水溶性リン酸塩の可溶化機構を解明することを目的としている。酸性土壌では、これらの有機酸はリン酸アルミニウム塩を可溶化させるが、リン酸と同時に生成し植物根に毒性を示す遊離Al^<3+>をキレートしその毒性を軽減させている。平成21年度繰り越し分では、前年度の結果に基づき、外生菌根菌のキレート作用のある有機酸の一つであるシュウ酸生合成酵素のクローニングを当初予定していた。本年度Laccaria bicolorをリン酸アルミニウムと共に培養し有機酸をGC-MSで分析したところ、シュウ酸は分泌量も多く、Al^<3+>の毒性緩和にシュウ酸の重要性は高いと考えられた。しかし、リン酸アルミニウム添加によりシュウ酸の分泌量が変動しなかった。そこで、Al^<3+>による代謝変動の解析に有効なマーカー代謝産物ではないと考えられた。そこで、他の有機酸代謝変動を網羅的に解析し、マーカー代謝産物を決定するために、CE-MS分析した。その結果、クエン酸、リンゴ酸の分泌量の増大が認められた。加えて、リン酸アルミニウム添加により、解糖系、トリカルボン酸回路のその他の中間代謝物の増大が全般的に認められた。外生菌根菌のシュウ酸前駆体として一報のみ報告されているグリオキシル酸は菌糸体から検出されたが、その量はシュウ酸と同様にリン酸アルミニウム添加により増大しなかった。この現象が、リン酸イオンあるいは、アルミニウムイオンに起因するのか、今後の検討を必要とする。
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