研究概要 |
西表浦内川マングローブと後背林(10樹種)・沖縄島比屋根マングローブで,シュートから内生菌分離試験を行ったところ,Colletotrichum sp., Phyllosticta sp., Phomopsis sp., Pestalotiopsis sp., Aureobasidium sp.が,比屋根/浦内川マングローブ,浦内川後背林に共通して出現した.このうち,Colletotrichum sp., Phyllosticta sp., Phomopsis sp.がつねに優占的であった.また,Seimatosporium sp, Mycosphaerella sp., Cladosporium sp., Fusarium sp., Cephalosporium sp., Nodulisporium sp.などが分離されたが,これらは地域や樹種に偏りが大きかった. 一方,同一調査地から,ヒルギ科3樹種の散布体の内生菌分離試験を行った.ヒルギ科では種子が樹上で発芽し,胚軸が果皮を破って長く伸長して,いわゆる「胎生種子」という形態で散布される.こうした散布体において,発芽種子・散布体のほぼすべての部位から内生菌が分離された. 3樹種とも,散布体等からの分離率は茎葉よりも著しく低く,萼に被覆された胚軸組織・スポンジ組織で高かった.また,散布体等での分離菌群数は,茎葉よりも少なかった,茎葉で高率に分離され,散布体等で分離されない菌群もあった.散布体のみから分離される菌はなかった,散布体組織からの内生菌分離率は,散布体の成熟・胚軸の外界への露出につれて高まるものではなかった. 以上のことから,発達した胚軸をもつヒルギ科の散布体が,水上の分散・定着・稚樹の初期成長に適応的であるだけでなく,多様な寄生菌類の「乗り物」としても相当に機能していることが,示唆された. このように,マングローブ内生菌相について,隣接する陸上森林との密接な関係に加え,散布体に乗って移動するという経路についても確認された.
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