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2008 年度 実績報告書

オルガネラ間の酸化還元・電子移動・エネルギー分配に依存したストレス回避と回復過程

研究課題

研究課題/領域番号 19580177
研究機関長岡工業高等専門学校

研究代表者

柴田 勝  長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (30300560)

研究分担者 野口 航  東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (80304004)
キーワード色素 / ルテイン / キサントフィル / 樹木 / 光合成 / 電子伝達 / ミトコンドリア / 葉緑体
研究概要

樹木特異的な色素変化とオルガネラ間の相互作用による光合成の最適化について。樹木に特異的なストレス応答機構としてluteinおよびα-Car(α-carotene)を中心とした7種のカロチノイドの相互置換により年間を通じて、過剰エネルギーの熱放散を誘導するviolaxanthin cycle(Vio cycle)を効率よく制御していた。ミトコンドリアによる葉緑体の過剰還元力の散逸過程を調べるために、葉緑体チラコイド膜での電子伝達鎖のplastoquinone (PQ)とミトコンドリア内膜の電子伝達成分のubiqunone (UQ)をTHP逆相カラムを用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により、UQおよびPQの酸化型・還元型の高感度・同時測定系を作成し、10mg以下の葉片でのキノンredox測定が可能となった。本法により樹木葉のキノン類の測定を行ったところ、葉緑体の電子伝達成分PQは光強度と共に還元型にシフトしたが、ミトコンドリアのUQは光強度に関係なく、還元型の比率が非常に高くなっていた。しかし、ユキツバキなどの一部の常緑樹では、酸化型が比較的、大量に蓄積されており、樹種によりそのredoxは異なっていた。
被陰処理により色素組成を変化させた樹木葉のクロロフィル蛍光の測定を行い、反応中心,光捕集タンパク質の色素変化が光合成のエネルギー利用効率に与える影響を調べた。その結果、弱光ではopen PSIIの光利用効率(Fv'/Fm')がβ-Car比率に依存せず一定であったが、中光ではβ-Car比率の上昇と共にFv'/Fm'が低下した。また、阻害を起こす過剰な光エネルギーの指標であるExcessは、弱光でβ-Car比率の低下と共に上昇した。光照射中の光利用効率は色素組成の違いに関係なく同程度であったが、被陰処理と共にNPQ(熱成分)が低下し、Φ_<PSII>(PSIIの量子収率)の低下が見られた。これらの結果は、弱光生育にはβ-Car比率を高くし、α-Car比率を低めることで、葉内の過剰エネルギーを軽減していることを示唆している。また、温度変化による色素組成の変化があり、被陰処理に比べて影響が大きく、また、より色素サイクルでの置換反応が起こりやすくなっていた。これらの結果は、季節的な環境変動に対する光合成の生理的な樹木の特異的な適応機構が存在しており、機能していることを示唆するものであった。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] プラストキノンの抽出と分析, 光合成研究法(Ed. 田中歩)2008

    • 著者名/発表者名
      柴田勝
    • 雑誌名

      低温科学 67

      ページ: 233-243

  • [学会発表] 樹木葉の環境応答としてのカロチノイド相互置換2009

    • 著者名/発表者名
      柴田勝, 松本拡太, 樋山麻美, 新井田聖次
    • 学会等名
      日本森林学会第120回大会
    • 発表場所
      京都大学総合人間科学部
    • 年月日
      2009-03-28
  • [学会発表] HPLCによるPQ・UQレドックスの同時分析とAOX欠損による影響2009

    • 著者名/発表者名
      吉田啓亮, 秋田駿介, 柴田勝, 寺島一郎, 野口航
    • 学会等名
      第50回日本植物生理学会年大会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2009-03-23
  • [学会発表] PAMクロロフィル蛍光測定のための簡易装置開発2009

    • 著者名/発表者名
      吉田秀俊, 柴田勝, 竹内麻希子
    • 学会等名
      第14回高専シンポジウム
    • 発表場所
      高知市文化プラザかるぽ-と
    • 年月日
      2009-01-24
  • [学会発表] 植物ミトコンドリアの電子伝達にともなうキノンの酸化還元2009

    • 著者名/発表者名
      長谷川祥, 阿倍悠太, 秋田俊介, 柴田勝
    • 学会等名
      第14回高専シンポジウム
    • 発表場所
      高知市文化プラザかるぽ-と
    • 年月日
      2009-01-24
  • [学会発表] ミトコンドリア・葉緑体電子伝達系に関わるキノン類の同時測定2009

    • 著者名/発表者名
      秋田駿介, 長谷川祥, 柴田勝
    • 学会等名
      第14回高専シンポジウム
    • 発表場所
      高知市文化プラザかるぽ-と
    • 年月日
      2009-01-24
  • [学会発表] HPLCを用いた光合成系と呼吸系の電子伝達鎖レドックス同時分析2008

    • 著者名/発表者名
      吉田啓亮, 寺島一郎, 柴田勝, 野口航
    • 学会等名
      日本植物学会第71回大会
    • 発表場所
      高知大学朝倉キャンパス
    • 年月日
      2008-09-26

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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