樹木種がその分布北限で環境ストレスを受けているかを明らかにすることを目的に調査を行った。ブナ自然分布北限域(北海道寿都町)において、7月に、共存するブナ、ミズナラ、シナノキ、ホオノキ、イタヤカエデ成木樹冠部個葉のガス交換速度(光合成速度、蒸散速度)、クロロフィル蛍光値の日変化、環境応答性を調べた。 夜明け前の樹冠部木部の水ポテンシャルの測定から、測定日は、土壌の乾燥ストレスがなく気温も平年並みであったため、この季節のガス交換速度のポテンシャルが得られたと思われる。冷温帯の主要樹種であり北海道全域に分布するミズナラは、測定5種の中で最も高い個葉の日最大純光合成速度(13.8μmol m^<-2> s^<-1>)を示した。ブナの個葉の日最大純光合成速度は、ミズナラに次いで2番目に高かった(10.2μmol m^<-2> s^<-1>)。他の3種の個葉の日最大純光合成速度は、7.3〜7.9μmol m^<-2> s^<-1>であった。純光合成速度/気孔コンダクタンス(水利用効率)は、多種より若干高い値を持ったホオノキを除いて、他の4種に大きな違いはなかった。それぞれの種がどれだけ高い純光合成速度を持てるかは、どれだけ高い気孔コンダクタンスを持てるかが重要であることが示唆された。クロロフィル蛍光測定から得られた夜明け前のFv/Fm値は、各種間に有意な差はなく、本年測定日までは、慢性的な光ストレスを受けていないことがわかった。さらに平年を超えるような気象環境下での測定や稚樹で得られたデータと併せて樹種特性を評価していく必要がある。
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