針葉樹人工林内に成育する樹種の種子散布特性とその散布者との関係を明らかにすることを目的として、本年度はスギ・ヒノキ人工林に生息する哺乳類相を調べ、樹木種子の散布者となる種を抽出した。人工林内に成育する主要な樹種のうち、動物散布型の種について散布者との対応関係を調べた。人工林の立地条件と出現する樹種の関係を解析した。 高知県西部の四万十川流域で行われたスギ・ヒノキ人工林の哺乳類調査の結果を取りまとめ、記録された哺乳類11種のうち樹木種子の貯食型散布者としてアカネズミ、ヒメネズミ、ニホンリスの3種、被食型散布者としてニホンザル、テン、イタチの3種を抽出した。被食型散布者3種はいずれも人工林での確認頻度がきわめて低かった。 人工林に成育する代表的な共存樹種であるイイギリとアカメガシワについて、被食型種子散布者との対応関係を調べ、イイギリについてはヒヨドリがもっとも重要な散布者であり、シロハラ、ルリビタキ、メジロが低頻度の散布者となること、アカメガシワについてはヒタキ類やメジロが主要な散布者となり、キツツキ類やジョウビタキ、エナガなどが低頻度の散布者となることを明らかにした。 高知県西部の四万十川流域で行われたスギ・ヒノキ人工林22林分の植生調査の結果から、立地条件と共存樹種の種子散布型との関係を検討した結果、高標高の林分で風散布型樹種の出現頻度が高い傾向があった。
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