本研究の目的は、森林のCO_2吸収機能をより正確に評価するために、森林土壌における有機炭素の蓄積速度を各地で測定し、日本における炭素蓄積速度の値域を解明することである。平成20年度は、引き続き大隅半島北部都城盆地周辺において火山噴出物を母材とする土壌、また静岡県安倍川源流部の大谷崩れによる岩屑流堆積物ならびに高知県佐喜浜川源流部加奈木崩れによる岩屑流堆積物を母材とする土壌を対象として有機炭素の蓄積速度を測定した。都城盆地周辺では、広い範囲において桜島安永噴火(1779年)による火山噴出物の上位には15cm弱程度のA層の発達が認められ、有機炭素の蓄積速度を算出すると0.01kg m^<-2> y^<-1>の範囲の値を示した。大谷崩れによる岩屑流堆積物、加奈木崩れによる岩屑流堆積物には5〜8cm程度のA層が発達していた。岩屑流堆積物は礫が多く含まれ、細粒部が少ないために、大谷崩れによる岩屑流堆積物における有機炭素の蓄積速度は0.004kg m^<-2> y^<-1>と火山噴出物に比べて低い値を示した。日本の森林土壌の30cmまでの炭素蓄積量は平均で約7kg m^<-2>とされているので、本研究で明らかにされた有機炭素蓄積速度から単純に算出すると、日本の森林土壌における炭素の蓄積のためには平均数百年から千年程度の土壌生成期間が必要であることが明らかになった。
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