研究概要 |
本研究の目的は、森林のCO_2吸収機能をより正確に評価するために、森林土壌における有機炭素の蓄積速度を各地で測定し、日本における炭素蓄積速度の値域を解明することである。平成21年度は、引き続き高知県佐喜浜川源流部加奈木崩れによる岩屑流堆積物、ならびに1984年御岳山崩れによる岩屑流堆積物を母材とする土壌を対象として有機炭素の蓄積速度を測定した。高知県加奈木崩れの岩屑流堆積地における炭素蓄積速度は、0,003~0.004kg m^<-2>y^<-1>であり、静岡県大谷崩れにおける蓄積速度と同等であった。また、御岳山崩れ岩屑流堆積物については植生の回復の遅い上部台地ではA層は色も薄く、厚さは2cm程度であった。航空緑化を行った中部台地では、植生も10m程度の高さまで回復しており、A層は明瞭に厚さ2cm程度認められた。自然放置ながら植生の回復が最も早い下部台地でもA層の厚さは2cm程度であったが、腐植はさらに下位の層準まで浸透していた。炭素蓄積速度は、上部台地、中部台地、下部台地それぞれ約0.01kg m^<-2>y^<-1>、0.02~0.03kg m^<-2>y^<-1>,0.04~0.05kg m^<-2>y^<-1>であった。植生の初期遷移過程では炭素蓄積速度が速いことが日光千手が原における調査結果から明らかになっているが、御岳でも同じ岩屑流堆積地であり300年程度の時間を経た加奈木崩れ、大谷崩れに比べて、場所による違いはあるものの、早い蓄積速度を示した。
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