研究概要 |
マツノザイセンチュウ侵入後のクロマツ樹体内の生体防御を明らかにするため、クロマツ抵抗性および感受性の接ぎ木クローンを作成し、それぞれにマツノザイセンチュウ(系統名:島原)を人工接種した。接種後、時間経過に応じて1日目から21日目までの組織片をそれぞれ採取した。採取する場合には、必ず同じ日数が経過した非接種個体の接ぎ木クローンからも組織片を採取した。これら採取した組織片からそれぞれtotal RNAを抽出し、cDNAに逆転写した後、suppression subtractive hybridization法に従って各時間経過に応じてどのような遺伝子が単離されるかを明らかにした。構築した7ライブラリーから5,200ESTを単離し、BLAST検索した結果、1,900ESTが既存のデータベースに登録されている遺伝子と一致した。これらESTにはこれまで抵抗性反応を示すと考えられてきたPRタンパク等が共通して含まれていたが、時間経過に応じてそれぞれのライブラリーから単離されるESTには特徴が認められた。特に、抵抗性に接種した個体と非接種個体間から単離される遺伝子の割合は、感受性等と比較して少なく、抵抗性個体ではマツノザイセンチュウ侵入後における個体の応答が鈍い傾向が示唆された。一方、感受性を対象としたライブラリーでは前述した既存のPRタンパク等を含め、高頻度でESTを単離出来た。また、これらの結果に基づいて抵抗性と非抵抗性間のマツノザイセンチュウ侵入後の応答にはより上流部で作用している可能性が示唆された。また、PRタンパク等の過剰発現による過敏間反応が松枯れの原因とも考えていたが、抵抗性でより強く発現しており、過敏間反応は枯損と関係しないことが明らかとなった。
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