研究課題
木材の実質は植物の二次細胞壁であり、二次細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった高分子の複合体から成り立っている。これら高分子物質の細胞壁内における立体構造が細胞壁の性質を決定しているはずであるが、それぞれの成分と立体構造の構築については、未だに知られていないことが多い。本研究では、セルロース・ヘミセルロース・ペクチンなど細胞壁構成糖鎖類がどういった機能を果たしているのか、これら糖鎖の主鎖を加水分解する酵素の遺伝子を導入したポプラを用いて、その細胞壁を解析することを目的とした。また、応用利用の観点から、これら糖鎖分解酵素遺伝子の組換え林木の木部の糖化性についても試験した。キシラナーゼ遺伝子組換えポプラでは、成長初期の茎部が野生株と比べてかなり柔軟であることが傾斜後姿勢制御実験でわかった。内部においては、二次木部の細胞壁肥厚が野生株と比べ2〜4節間ほど遅く、このことが茎部に柔軟性を付与する原因であると考えられた。ペクチンの主成分であるポリガラクツロン酸を分解するポリガラクツロナーゼ遺伝子を導入したポプラでも、引張あて材形成による姿勢制御が抑制された。木部の繊維細胞を調べたところ、その長さが野生株と比べて短くなっていることがわかった。ペクチンは細胞と細胞を接着する細胞間層に多く、細胞間でのすべり成長を阻害した結果、繊維細胞が短くなり姿勢制御能が劣ることになったと推測される。これら糖鎖分解酵素遺伝子の組換え体では、キシログルカナーゼ・キシラナーゼの組換え体で、木部の糖化性が向上した。これは、細胞壁が形成される場でセルロースとヘミセルロースの相互作用が切られながら細胞壁が堆積し、結果として糖化時の酵素のアクセシビリティが向上したことが原因であろうと推測される。
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