研究概要 |
近年,高温高圧水蒸気処理を用いた,木材の加工及びその基礎的研究がなされており,含水率が異なると木材の物理的性質が大きく異なることがわかっている。しかし,高温高圧にある水蒸気雰囲気下での含水率測定が困難であることから,これまで我々は測定雰囲気の相対湿度を含水率の目安として用いてきた。本研究では,100℃超温度域で各相対湿度の水蒸気雰囲気下における木材の平衡含水率を正確に求めるとともに,それを用いて100℃超温度域にある木材の幾つかの力学的性質に及ぼす水分の影響を明らかにすることを試みる。そのため、まず、本年度は高温高圧過熱蒸気雰囲気での含水率測定法の確立を目指し、重量法により試料の含水率を求めた。試料重量の測定には磁気浮遊型天秤法を用いた。この方法では装置の天秤部と試料部は遮断されており,試料は天秤に直接吊るされることなく,天秤側の電磁石と試料部側の永久磁石を用いた磁場で連結される。そのため,試料部が高温高圧であっても天秤がかく乱されることなく,正確な重量測定が可能となった。この方法を用いて、40〜180℃、相対湿度20〜90%RHの範囲でスギ材の吸着等温線を得た。結果を、各相対湿度で比較すると測定温度範囲で温度の増加とともに含水率は直線的に低下した。しかし、吸着等温線の形状は温度の増加とともにBDDT分類でII型からIII型に移行するように見え、吸着水の存在形態は高温域では従来と異なることが示唆された。
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