研究概要 |
密度成層の強い汽水域においては,夏期に底層が貧酸素化して底生生物が死滅する。この現象を改善するための方法を開発するため,東京海洋大学品川キャンパス内の係船場において,海底付近の高塩分(高密度)の海水をポンプでくみ上げマイクロバブルを添加して再度海底付近に戻すことによる溶存酸素の上昇効果を調べた。予備実験では,海水流量約14L min^<-1>に対して,空気注入量を0.2L min^<-1>とした場合に最もバブル径が小さくなることが,ビデオ画像解析により観察されたことから,この条件で現場実験を行った。バブル発生ノズルを海底直上約30cmに位置するように設置し,周囲の溶存酸素の上昇を調べた結果,ノズル付近では溶存酸素濃度が上昇し,酸素濃度の上昇した海水は水平方向に広がる様子が観察された。この効果を確かめるため,バブル発生装置の周囲を直径125cm,高さ3mのビニール製の囲いで仕切って実験を行ったところ,バブルに連行して海水が上方に移動することはなく,高酸素水は底層にとどまったことから,マイクロバブル内の酸素は効率よく海水に溶け込むことが明らかとなった。発生装置運転中は海底直上水の溶存酸素濃度は約2mg L^<-1>上昇したが,この効果は運転停止後1日以内に見られなくなることから,溶存酸素は海水中の有機物により速やかに消費されたと考えられる。今回使用した,マイクロバブル発生装置用のポンプは250Wの小規模のものであったため,今後装置を大型化して研究を継続する予定である。
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