研究概要 |
有明海における赤潮増加の機構を解明するため,生態系シミュレーションモデルを構築した,また,モデル構築に必要な各種パラメータを得るために,現地調査・室内実験を実施した,数値モデル構築にあたっては,有明海奥部の植物プランクトン生産に強く影響する光環境について充分な現況再現ができるように,有明海奥部で得られたパラメータを用いて,底質の巻き上げ・懸濁物質の沈降を,モデル内部で計算できるようにした.その結果と有明海奥部で得られた透明度と表層水中のSS・光束消散係数の関係式を用いると,実海域の透明度変動を良く再現できることが確認された.さらに,植物プランクトンとその捕食者を考慮に入れた生態系シミュレーションモデルを構築した.しかし,このモデルでは,植物プランクトン量変動についてまだ充分な現況再現ができていない.これは以下の要因が大きいと考えられた.1)現地調査から,有明海奥部では,SSだけではなく植物プランクトンについても,1潮汐の間に活発な鉛直移動があることがわかった.珪藻類は沈降・再浮上を繰り返しており,鞭毛藻類は日周鉛直移動している.有光層の厚さが薄い有明海奥部では,こうした鉛直移動の影響が大きいが,モデルに適切に反映することができていない.2)現地調査からは,有明海奥部では浅海域海底・干潟からの栄養塩回帰がかなり大きいことがわかった。こうした影響について,モデルではまだ充分に再現できていない.海域間比較については,瀬戸内海の内湾部と有明海についてモニタリングデータを収集して,クロロフィルa,透明度,栄養塩濃度の変動機構について整理,比較した.大阪湾・広島湾では植物プランクトン濃度が高いと透明度が低くなる一方で,有明海奥部ではこうした関係は見られなかった.
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