研究概要 |
天然トラフグ稚魚と,同サイズの人工種苗の行動特性の定量・比較を通じて,放流種苗の種苗性評価の手法として,新規環境に晒されたときの稚魚の遊泳水深が有効で,種苗性の高い個体や天然稚魚は底層を泳ぐことが明らかとなった。 飼育中に捕食者を提示した場合,種苗が新規環境に晒されたときに底層遊泳をする場合と表層遊泳をする場合に完全に二分された。表層遊泳をする個体とそうでない個体を同時に,捕食者の居る天然水域を模したメソコスムに放流すると,表層遊泳をする個体が多く被食を受けた。 これを受けて,人工種苗が放流後に底層を遊泳しないのは,飼育時に底質のない水槽で飼育されているために,放流後に底質を認知できないのではないかという仮説を立てた。そこで,水槽底面に砂を敷いた水槽とそうでない水槽で人工種苗を1週間馴致飼育した結果,砂を敷いた水槽で馴致した人工種苗は移槽後に底層を遊泳することが明らかとなり,さらに捕食者の居る環境に放流したところ,砂馴致種苗が生残率の高い傾向が見られた。 以上のことから,底質への馴致と捕食者の提示という方法で,トラフグ人工種苗の放流後の行動を制御し,種苗性を高める可能性のあることが示された。 さらに,天然トラフグ稚魚がフグ毒を蓄積していることに着目し,試験的に無毒の人工種苗にフグ毒を投与したところ,新規環境に晒した場合に底層遊泳をする個体が出現し,これらの個体が被食に遭いにくいという予備知見を得ることが出来た。
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