研究概要 |
ハマグリMeretrix lusoriaは,日本各地の干潟で最も普通に見られる二枚貝であったが,現在は多くの地域で激減している.日本一の漁獲を誇る熊本県も同様で,漁獲量は最近20年間で約20分の1に減少した,我々は,『干潟が健全で乱獲がなければ,ハマグリは砂質干潟の優占種で,その保全は漁業だけでなく,干潟生態系を守る上でも重要である』との考えに基づき,本種の生活史特性の把握,個体数激減の原因解明,さらに,資源管理技術確立に向けた研究を進めている.平成20年度は,厳格な資源管理が行われている福岡県加布里湾とほとんど資源管理が行われていない熊本市白川河口での比較調査を継続した.また,得られた成果を講演会などで発表すると共に,著書やリーフレットにまとめた. 野外調査の結果,稚貝の着底量には年変動が大きいことがわかった.加布里湾では2006年年級群,白川河口では2007年年級群が多かった.稚貝は8月以降急増し,冬季には主として河川や澪筋に多かったが,成長するにつれて海域や周囲に移動した.稚貝の成長は遅く,孵化2年後の殻長は平均12mmに過ぎなかったが,成貝の成長は速く,年に10-15mmの割合で成長した.また,成貝の生残率は高かった.現在明らかになりっっあるハマグリの生活史特性(比較的速い成長,低い死亡率,長い寿命,新規加入量の年変動)は,白川河口においてもハマグリの資源管理が有効であることを示唆している. なお,資源管理を進めるには生物学的な研究だけではなく,漁業者間の資源管理に関する合意形成も重要である.平成20年度は,資源管理に関するリーフレットを作成し,漁連・漁協や行政(県・市)に配布すると共に,講演会等でも使用した.さらに,ハマグリの資源管理に関する著書「肥後ハマグリの資源管理とブランド化」を執筆(共著)した.
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