研究課題
プロバイオティクスを用いてヒラメ種苗生産過程における衛生管理法を確立することを目的として研究を遂行し、以下の結果を得た。1. 非汚濁水域であり、近隣に養魚場のない下田市田ノ浦湾の海産魚類の腸管内容物、海水および底砂における魚病細菌Listonella anguillarumの分布状況を調べた結果、31%の試料から本菌が分離された。供試した魚類はいずれも疾病の徴候がないことから、本菌が、健康な魚類に広く分布する日和見感染菌であるとのこれまでの報告を裏付けた。そのため、本菌を防除するにはプロバイティクスの使用が有効であることが示唆された。2. プロバイオティクスの候補菌として乳酸菌を海産魚類およびナマズの腸管から分離し、分子系統解析および表現形質による同定を行ったところ、Lactococcus lactisと同定された。これらの菌株の一部は過酸化水素を生産して魚病細菌の増殖を阻害することが明らかとなった。3. プロバイオティクス細菌としてアルテミアなどの甲殻類に投与する場合、細菌から生産されるキチン分解酵素が甲殻類の飼育に作用する可能性があるため、Vibrio属細菌(V. proteolyticusおよびV. parahaemolyticus)由来のキチナーゼの遺伝子解析を行った。またV. proteolyticusの培養液をアルテミアに作用させたところ、致死効果があることが判明した。4. ヒラメ腸内細菌叢との比較のため、淡水魚類に広く分布する偏性嫌気性細菌(Bacteroides A型菌)の分類学的検討を行ったところ、本菌はバンコマイシンを投与したヒト自閉症児から分離されたCetobacterium someraeと同一であることが判明した。
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