魚類Tリンパ球亜集団の明確な識別を目指して、重要なCD4ファミリーマーカーの解析を進めている。現在ギンブナCD4Lファミリー遺伝子群の種々の知見を得るための研究が昨年に引き続き進行中である。金魚並びにギンブナS3N系統及びOB1系統よりCD4L-1遺伝子を単離する事ができた。これらの遺伝子は高い多様性を示しているが、バリアントは全てゼブラフィッシュ群と分かれた後に確立したものであると考えられた。CD4L-1遺伝子のある同一種内バリアントは62%程度のアミノ酸一致しか示さない事も明らかになった。またcDNA解析により、OB1系統では膜結合型のCD4L-1グループに分類される配列を有する分子が、S3N系統では分泌型のタンパク質として見出された。CD4L-2については、S3N系統ギンブナにおいて、複数の配列を見出す事ができた。LAG-3関係の研究も徐々に進んでおり、CD4-LAG3ファミリー遺伝子及びその周辺遺伝子群の進化について興味深い知見が得られつつある。CD4L-3に関しては、単離したモノクローナル抗体を用いて、この分子を発現している細胞集団を詳細に調べている。哺乳類における報告を基にして、魚類CD8分子の細胞質ドメインとLck分子との結合を調べる研究を合成ペプチドを用いて行った。CD8分子はCD4分子と共に重要なTリンパ球マーカーであるが、より明確な結果が期待できると予想されるCD8分子を用いて、実験系の確立を目指した。この研究のためのモデル魚類として、ギンブナと比較してより多くの知見が蓄積しているニジマスを選んで行った。
|