本年度は、詳細な魚類CD4ファミリーマーカー解析を行なった結果CD4/LAG-3分子と関係のある分子として見い出した哺乳類G6F類似分子である魚類特異的分子G6Tについて、詳細な解析を行なった。この分子はその細胞質ドメイン領域に、他の重要な免疫学的機能を有する分子に限定して良く見い出されユニークなモチーフとして知られるITAM(immuno-receptor tyrosine-based motif)を有していることが判明し、この事はG6F/G6T分子群が免疫システムの進化と密接な関係を持つ事を示唆している。ギンブナG6T分子に対して作成した特異的なモノクローナル抗体を用いて、この分子が魚類トロンボサイトや赤血球の細胞表面に発現している事を明らかにした。トロンボサイトと赤血球両者におけるG6Tの発現は、これらの細胞がおそらく止血作用において共通した機能を有する事を示唆しており、また血液細胞生成過程においてこれらの細胞の類縁関係を示唆していると考えられる。詳細なゲノム解析を行なった結果、CD4/LAG-3/G6F/G6T遺伝子群は、真骨類魚類のゲノムにおいて、本研究がその解析に重要な寄与をしていると考えられる原始的なMHC(主要組織適合遺伝子複合体)ゲノム領域に似た領域に存在しているを明らかにした。現在、G6T分子とCD4/LAG-3/G6F/G6T分子群の進化に関する論文を投稿中である。
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