研究課題/領域番号 |
19580222
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
江口 充 近畿大学, 農学部, 教授 (40176764)
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研究分担者 |
宮下 盛 近畿大学, 水産研究所, 教授 (80088658)
中川 至純 近畿大学, 水産研究所, COE博士研究員 (70399111)
中瀬 玄徳 近畿大学, 水産研究所, COE博士研究員 (40454623)
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キーワード | 種苗生産 / 微生物ループ / ナノクロロプシス / プロバイオティックス / 細菌群集構造 / 飼育水 / 微細藻類 / サプリメント |
研究概要 |
種苗生産とは受精卵を陸上の飼育水槽に導入し、仔魚から稚魚へと育てるまでの段階を指す。この陸上飼育水槽では通常、天然海水をそのまま利用して飼育を行う、かけ流し方式が採られる。したがって、飼育水槽内では仔稚魚を頂点とした、独自の生態系・食物網(構成生物:ウイルス・細菌・微細藻類・動物プランクトン・仔稚魚)が出来上がっている。この飼育水の環境条件の変化、特に初期の仔魚の生残には飼育水中の細菌群が種苗生産の成否を左右する。本年度は仔魚飼育に効果的だとして従来から経験的に飼育水に添加されてきた微細藻類(Nannochloropsis oculata、以下ナノクロ)が飼育水中の細菌群集をコントロールする可能性を確認し、ナノクロの生理状態により細菌群集が仔稚魚にとって良くも悪くもなることを明らかにした。さらに、ナノクロ培養液には、特定の細菌群が優占的に存在し、このナノクロとの共存性の高い細菌群(α-プロテオバクテリアグループ、Cytopha-Flavobacteriumグループ)が飼育水中でも優占すると仔稚魚の生残が良くなることが明らかになった。飼育水を人間の腸管内に例えるならば、微細藻類は善玉菌の増殖をサポートするサプリメント、すなわち健康補助食品的な機能を果たしているのかもしれない。善玉菌を大量に投入することで、飼育水環境を直接的に整えるプロバイオティックスは、その用法という面からいうと、従来から行われている薬剤の投与と基本的に似ている。それに対して、植物プランクトンにより間接的に細菌群集を制御しようとする方法は、いわば飼育水生態系の地道な体質改善を志向する方法といえるかもしれない。消費者の食の安全への関心の高まりや法改正に伴う薬剤の使用の制限などから、より環境を配慮した飼育法が望まれており、微細藻類による飼育水環境の制御は有用な方法といえる。
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