研究課題/領域番号 |
19580223
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
水産学一般
|
研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (70369122)
|
研究分担者 |
堤 裕昭 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (50197737)
野村 雄二 広島大学, 大学院・医歯薬総合研究科, 助手 (80218370)
|
研究期間 (年度) |
2007 – 2010
|
キーワード | アサリ / 有明海 / マンガン / 干潟 / 稚貝 |
研究概要 |
有明海砂質干潟において、底質間隙水のMn やZn, Cu 等重金属の濃度に差が見られ、濃度が20ppmに達する地点では稚貝の殻が脆弱になる事がわかっていた。そこで、本研究では、まず河川水のMn濃度を比較した結果、源流域から含まれるMnが干潟に堆積し、河川によるMn濃度の違いが干潟の底質間隙水濃度の違いに反映されている事が確認された。高濃度のMn がアサリに生理的負荷を与え、その結果として殻形成に弊害が生じるとの仮定に基づき、幼貝を用いて曝露実験をおこない、アセチルコリンエステラーゼ、メタロチオネイン等の酵素活性の定量や、DIRECT TOF-MS法による外套膜で分泌されるペプチドの網羅的比較等をおこなった。この中で、高濃度の現場と同一レベルの20ppmのMnに曝露された場合、現場の砂が存在する場合にはアセチルコリンエステラーゼ活性とカルボキシルエステラーゼ活性に有意な低下が認められ、高濃度マンyガン曝露が幼殻形成期の稚貝にストレスを与えていることが示唆された。また、ヒト骨芽細胞MC3T3-E1に対してMnを曝露したところ、細胞増殖が抑制される一方でオステオポンチンとオステオカルシン活性が向上した。脊椎動物ではあるが、骨・カルシウム代謝にMn イオンが大きな影響を与える事が確認できた。最後に殻に対するMnのダイレクトな影響を調べた結果、稚貝の死亡が多い干潟では殻自体に多くのMnが含まれている事が判明し、この事が殻の脆弱性の原因である可能性も高くなった。今後、SEM/EDXを用いて殻の微細構造とMnの存在様式を確認する予定である。以上のように、高濃度Mn は着底直後の稚貝に生理的ストレスを与えながら殻形成を阻害し、殻にも直接取り込まれて殻の脆弱性を増していると考えられた。
|