平成19年度の対馬沖実験においてロガー類の回収が極めて困難であることが判明したため、計画を変更して定置網で捕獲されたシイラにロガーを装着して実験を行うこととした。静岡県赤沢港沖の定置網で捕獲されたシイラ3個体に加速度ロガー(2軸加速度、水深、水温)を装着して定置網内に放流し、定置網内で切り離して回収を行うこととした。魚体には加速度ロガー、切り離しシステム、方向探知用送信機および浮力体を一体化したシステムを魚体背部に装着した。1個体は24時間後にシステムが浮上して回収に成功したが、他の2個体は予定時間を過ぎても浮上を黙視出来ず、また無線の入感も認められなかった。回収した個体のデータからはこの個体はほどんど活発に遊泳することなく、海底付近に留まるという以上行動が確認された。この個体は網み上げ後にで死んでいるのが発見され、データに見られた異常行動は漁獲時に受けた影響或はシステム装着の影響により弱った状態になったと推測された。回収に失敗した個体はタイマーの作動前に網を離脱したと考えられた。本実験の結果、表層回遊魚の装着実験では装着システムの一層の小型化と回収システムの技術的改良が必要と考えられた。今回の実験の失敗を受けて本研究では新たな課題として小型切り離しタイマーの開発と位置情報通信システムの開発を行った。その結果、従来の1/10の大きさのマイクロタイマー(径8mm、長さ20mm、重さ1g)を開発した。また新たな超小型加速度ロガーの開発や超小型位置情報通信システムとしてアルゴス送信機小型化の課題に取り組んだ。以上の他本研究では魚類の採餌行動についての予備的計測を行い、ニジマスの顎に加速度ロガーを装着し、ニジマスの採餌エベントの自動計測に世界で初めて成功した。この顎の動きを計測する手法では顎の静止加速度変化(姿勢)から静止時の呼吸数も同時に計測可能なことも判明した。
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