研究課題
個体識別の可能なマイクロサデライトマーカーおよび分子生物学的手法を利用して、有害植物プランクトンの一種であるChattonella(ラフィド藻)の生活史の全容を解明することを目的として研究を進めた。具体的には、Chattonellaの生活史における各ステージの細胞(栄養細胞、小型細胞、シスト)を分離して、各々の細胞の核相をマイクロサテライトマーカーで直接的に決定し、これにより減数分裂時期と複相化の時期を特定するというアプローチをとった。またシストからの発芽細胞において無性的複相化が起きるという過去の報告の検証も併せて行うこととした。平成19年度は、C.antiquaの栄養細胞と小型細胞をマイクロピペットによって単離し、1細胞ごとにマイクロサテライトマーカーによる解析を行った。その結果、すべての栄養細胞において、いずれかのマイクロサテライトマーカーにより2本バンドが検出された。このことは栄養細胞が2倍体でヘテロ接合体であることを示唆しており、接合の結果生じた可能性を示唆するものであった。小型細胞については、1本バンドのみが検出される小型細胞(タイプ1)と2本バンドを示す細胞(タイプ2)の存在が明らかとなった。タイプ1の小型細胞は、減数分裂の結果生じたと考えられた。タイプ2の小型細胞は栄養細胞と同じ核相(2倍体ヘテロ接合体)と考えられ、接合を経ずに栄養細胞から直接シスト(休眠細胞)へ変化する可能性が考えられた。単細胞レベルのマイクロサテライトマーカー解析が核相解析に有効であることが明らかになったことから、今後は同手法を自然界からのシストあるいは実験的に誘導したシストに適用することで、シストの核相解析を行い、Chattonellaの生活史の全容を明らかにする予定である。
すべて 2007 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)
Molecular Ecology Notes 7
ページ: 315-317
Aquabiology 29
ページ: 204-211
http://www.nies.go.jp/biology/lab/microbialeco/kawachi/kawachi.htm