Chattonella antiqua DEM-124株の栄養細胞17細胞と小型細胞20細胞、C.antiqua DEM-3011株の栄養細胞17細胞と小型細胞19細胞をマイクロピペット法により単離し、全ゲノム増幅キット(QIAGEN社製)を用いて全ゲノムを増幅した後、6セットのマイクロサテライトマーカーで遺伝子型を決定した。その結果、解析したすべての栄養細胞において、マイクロサテライトマーカーによる増幅断片が2本検出され、栄養細胞が2倍体ヘテロ接合体であることが示唆された。すなわち栄養細胞は、接合の結果生じたことが強く示唆された。一方、小型細胞の解析から、マイクロサテライトマーカーによる増幅断片が1本しか検出されないタイプ(DEM-124株の8細胞とDEM-3011の9細胞)と栄養細胞と同じ2本の増幅断片をもつタイプ(DEM-124株の12細胞とDEM-3011の10細胞)の存在が明らかとなった。前者のタイプは、減数分裂の結果生じた可能性が、そして後者は、減数分裂を行う前の段階の可能性とそのままシスト化する可能性が考えられた。瀬戸内海の海底堆積物より分離した8細胞のシストの解析では、いずれもマイクロサテライトマーカーによる増幅断片が得られなかった。以上の結果から、Chattonellaは減数分裂により栄養細胞から小型細胞へと移行し、小型細胞同士の接合の結果、2倍体のヘテロ接合体のシストが形成される場合と2倍体の状態で小型細胞からシストが形成される場合の2つの経路が推察された。
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