研究概要 |
ミトコンドリアDNA全塩基配列に基づき,フグ目すべての系統を代表する種及びフグ目に近縁と目される系統を代表する硬骨魚種,合計44種の系統類縁関係を,ベイズ法によって推定した.その結果,フグ目は単系統群であることが明らかとなった.このことは,多様な形態及び生態を示すフグ目が自然分類群であることを強く支持した.また,これまでフグの姉妹群としてニザダイ亜目,マトウダイ目,アンコウ目などが候補とされていたが,このたびの結果では,姉妹群はアンコウとヒノダイ亜目であることが判明した(論文発表).フグ目の中では,従来認められていたギマ上科,モンガラカワハギ上科及びフグ上科の単系統性は支持されなかった.そのかわり,ギマ科,モンガラカワハギ科,カワハギ科,フグ科,ハリセンボン科及びマンボウ科のクラスターと,ハコフグ科ベニカワムキ科及びウチワフグ科のクラスターが,高い事後確率で認められ,高次分類再検討の必婆性を示唆した(投稿中).さらに,日本近海から得られるトラフグ属15種について分子系統関係を推定したところ,本属ににもっとも近縁なものはシッポウフグ属であること,及びトラフグ属内の遺伝的類縁が極めて近縁であることが明らかとなった.このことはトラフグ属が単系統群であることと同時に,東シナ海を中心とした海域で急速に多様に分化したことを示している(学会発表1).近縁ではあるものの,それぞれの種は明瞭に異なる塩基配列を有しており,雑種ではない限り,適切なプライマーを設計することにより種識別マーカーを作成することが可能であろう.また,トラフグ属4種について,人工授精による種苗の発育過程を調べ比較した(学会発表2).このたび調査したミトコンドリアDNAは母系マーカーで,雑種については母系のみ判定が可能である.これからは,AFLPマーカーの分析を行ない,核遺伝子に基づいた判別マーカーを検索する必要がある.
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