研究概要 |
マベガイ外套膜抽出物から既に精製されているレクチン(PPL-1,-2A,-2B,-3)に加えて、アフィニティークロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーによってPPL-4を単離・精製し、それぞれの一次構造を解析した。PPL-1以外のレクチンはすべて植物由来レクチンjacalinと相同性を有しており、これらのレクチン間の相同性は40〜50%であった。これに対してPPL-1はラムノース結合性レクチンと相同性を示し、PPL-2〜-4とはまったく異なる構造を有していた。特異的結合糖はPPL-1ではガラクトース、N-アセチルラクトサミン、ラルトースであったのに対し、PPL-2Aはトレハロース、PPL-3はイソマルトース、PPL-4はN-アセチルグルコサミンといずれもグルコースを基本とする糖と結合性を有していた。一方、PPL-2Bは糖との結合を示さなかった。 この事実は、マベガイ生体内に構造および性状のまったく異なる複数のレクチンが存在し、それぞれ生理機能を発揮している可能性を示唆している。 生理機能について検討する目的で、微生物との相互作用につい精査した。PPL-1はグラム陰性菌を強く凝集したが、グラム陰性菌の表面に存在するLPSとの反応についてはO-抗原を失った変異株とも反応を示し、さらにグラム陽性菌の表面にあるリポテイコ酸と強く反応した。アミノ酸配列から、PPL-1は非常に塩基性の強いタンパク質であることがわかったので、レクチンとしてのみでなく、抗菌タンパク質としても機能する可能性が考えられた。PPL-2,-3については細菌との相互作用が見られなかったため、これらは異なる生理機能を有すると考えられる。それぞれのレクチンのmRNAをノックダウンしたD型幼生(貝殻形成期にあたる)を作出して、形態学的に調査した結果、PPL-2の発現が抑制された個体において有意に貝殻の形成不全が起きていた。PPL-2の生理機能は貝殻の形成(カルシウム結晶化調節)に関わるものであると考えられた。
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