研究概要 |
マベガイ外套膜から得られたレクチンPPL1~4のうち、今年度は主としてPPL2の生理機能について検討を行った。PPL-2は真珠の形成(バイオミネラリゼーション)に関わるカルシウム結晶化、特アラゴナイトの結晶化を制御することを既に明らかにしているが、その他に以下の結果から生体防御に関わる機能を有することが明らかになった。 ・各種のグラム陽性菌3種とグラム陰性菌7種を液体培養し、FITCで蛍光標識した後にPPL-2の溶液と反応させた結果、特にグラム陰性菌を強く凝集した。 ・上記の結果を受けて、グラム陰性菌が細胞表面に持つ糖鎖の中で菌種によって特異的構造を有し、毒性を有する各種リポポリサッカライド(LPS)との凝集反応を観察した結果、数種のLPSと強く凝集反応を示した。その傾向はPPL-1と類似していた。 ・PPL-2が凝集活性を示したグラム陰性菌のうち、サルモネラ菌2種と大腸菌2種について菌の増殖を抑制するか否かを検討した。細菌を一定濃度に調製し、PPL-2溶液を加えて寒天培地に播種した後にインキュベートし、経時的に菌数を測定したが、PPL-2に有意な静菌作用は観られなかった。ただし、これについては対象とする菌種を増やして検討を行う必要がある。 ・PPL-2の殺菌作用を調べるため、寒天培地で円筒法にてPPL-2と共に各種細菌を培養し、殺菌能力を観察した。先に検討した計10種の菌種について検討したが、殺菌効果を示す阻止円が観察されれたものは無かった。 これらの結果より、PPL-2は細菌凝集活性を有するが、静菌・殺菌活性を持たない可能性が示唆された。この傾向はPPL-1でも同様であった。このことより、PPL-1,2は細菌を凝集しオプソニン化する機能、即ち細菌とPPL-1,-2の結合によるサイトカイン放出の可能性が考えられた。 なお、PPL-3は検討した菌種については細菌凝集活性能が確認されなかった。
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