水産資源の有効利用および地球環境に優しい包装材の開発を目的に、各種水産加工残滓や魚肉を利用して生分解性・可食性フィルムを調製し、それらの性状改善を試みた。 1.廃棄される部分に残るクロカジキ肉を採取し、これらすべてを用いて生分解性フィルムを作成することに成功した。30℃で貯蔵して鮮度が低下したクロカジキ肉からも透明である程度の引っ張り強度を有するフィルムを作成できた。 2.天然抗菌剤であるボリリジンをフィルムに添加することにより、鮮度低下した肉類に存在する各種微生物数を抑制し、微生物学的にも安全なフィルムが作成できることを明らかにした。 3.冷凍すり身の新規利用方法として、生分解性・可食性フィルムをスケトウダラすり身を用いて作成することに成功した。フィルム形成溶液のpHを酸性に調整することにより、透明で機械的性質に優れたフィルムが調製できた。 4.酸性側でフィルムを作成すると、すり身タンパク質の主要成分であるミオシン重鎖の分解が進み、それに伴ってフィルムの引っ張り強度が低下することが分かったため、ミオシン重鎖の分解要因について検討した。その結果、本分解は、すり身中に内在する酸性プロテアーゼの作用に起因することを証明した。主たる酸性プロテアーゼはカテプシンDとシステインプロテアーゼであることを明らかにした。 5.最後に、酸性プロテアーゼ活性を抑えて酸性側でフィルムを作成する方法について検討した。可食性であることを考慮して、プロテアーゼインヒビターの利用は抑え、フィルム形成溶液を加熱する方法を考案した。その結果、70℃で20分間加熱するのが最適であることを見出した。
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