栄養価に富む水産食品並びに医薬的成分などを含有する海洋資源の需要は、国内外でこの数年確実に増加している。さらに年間1人当り消費する水産物の量は全世界で増加傾向にあり、特に人口が多い開発途上国でその傾向は顕著である。これらのことは水産資源の枯渇を招く可能性が大きいため、資源を維持しながらさらに品質向上を常に認識して研究・開発を進める必要がある。本研究では、マグロ缶詰製造時に廃棄される皮の有効利用とスケトウダラ冷凍すり身の新規利用法に焦点を当てた。以下に主たる成果をまとめる。 1.マグロ皮のゼラチン組成と性状 : 本ゼラチンの機能性を一般組成、アミノ酸組成、各種食品化学的性状の面から検討した。本ゼラチンの加水分解物が脂質酸化を効果的に防止する性質を有していることを見い出した。 2.マグロ皮ゼラチンを用いた可食性フィルムの性状 : 本ゼラチンの利用方法として、環境に優しい包装材の開発の一環として、生分解性・可食性フィルムを調製することに成功した。さらに、本フィルムに各種抗酸化剤を添加することにより、魚肉をはじめとした酸化を受けやすい食品の保存期間延長に利用できることを明らかにした。 3.可食性すり身フィルムの性状とその利用法 : スケトウダラすり身を用いた可食性フィルムの最適調製法を確立し、その利用方法について検討した。本フィルムは酸素透過性が極めて低く、また紫外線を透過させないため、脂質酸化を防止するのに使用できることが示唆された。さらに、本フィルム調製後の褐色化現象について化学反応的研究を実施した。
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