研究課題/領域番号 |
19580237
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
荒川 修 長崎大学, 水産学部, 教授 (40232037)
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研究分担者 |
橘 勝康 長崎大学, 水産学部, 教授 (20171712)
高谷 智裕 長崎大学, 水産学部, 准教授 (90304972)
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キーワード | テトロドトキシン(TTX) / 養殖トラフグ / 筋肉内投与 / 稚魚 / 免疫組織化学 / 上皮基底細胞 |
研究概要 |
フグ体内におけるフグ毒テトロドトキシン(TTX)の吸収・蓄積・代謝・排泄機構を明らかにするため、無毒の養殖トラフグにTTXを筋肉内投与し、その後の毒の移行・蓄積状況について検討した。当初は性成熟の影響を調べるため、雌性ホルモンの投与実験を行う予定であったが、適当な年齢の雌個体を十分量入手できなかったため、今回は稚魚期の個体を用い、投与毒の精製度による差異をみることとした。試験魚を2区に分け、それぞれTTX標準品(精製毒)と有毒フグ卵巣のTTX抽出液(粗毒)を50MU/個体の用量で投与したところ、両区ともにTTXは血液を介して速やかに筋肉から他の部位へ移行した。しかしながら、投与4時間後から72時間後にかけての毒の移行様式は、精製毒と粗毒で異なり、前者の場合、肝臓にはTTXがあまり保持されず、12時間後以降は体内に残存した毒のほとんど(96%以上)が皮へ移行・蓄積したのに対し、後者の場合、24時間後まで相当量の毒(投与毒量の15-23%または体内残存毒量の28-58%)が一旦肝臓に移行・保持された。トラフグの肝臓組織は特異なTTX取り込み機構をもつことが知られており、粗毒中の共存物質により本機構が増強されるか、もしくはTTX分子が取り込みやすい形態に変化することで、このような差異が現れたものと推察された。一方、免疫組織化学的手法により皮に蓄積したTTXの微細分布を調べたところ、上皮基底細胞に局在しており、分泌細胞には達していないことが示された。稚魚の場合、成魚とは異なり、皮膚のTTX排出能あるいは肝臓や卵巣のTTX蓄積能が未熟であることが示唆された。
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