研究概要 |
ディクティオデンドリン類は、大草諸島近海産のカイメンから単離された硫酸エステル基を有するピロール型のアルカロイドあり、50μg/mL濃度で完全にテロメラーゼ活性を阻害することが知られている。本研究では、テロメラーゼ阻害に基づく新規抗ガン剤の開発のための基礎研究として、(1)親化合物であるディクティオデンドリンAの全合成を行い、新規合成ルートを開発すると共に、詳細な生理活性を調べるためのサンプルを供給する。(2)親化合物の構造を変化させた誘導体、並びに構造類似の天然物(ポリシトン、プルプロン、ニンガリン)の硫酸エステル等の、ディクティオデンドリンのアナログの合成を行う。(3)合成した関連化合物のテロメアーゼ阻害活性、各種ガン細胞に対する増殖阻害活性等の生理活性を評価し、新規候補物質のデザインの基準となる構造活性相関に関する基礎データを蓄積する。平成19年度は、親化合物であるディクティオデンドリンAの全合成研究から始めた。本合成には、申請者らがラメラリンα20-サルフェートの合成等を通して培ってきた3,4位二置換ピロールアルカロイド合成法を応用した。チラミンから出発し、Hinsberg型の縮合反応によりピロール環を構築し、これの3,4-ビストリフレートに4-イソプロポキシフェニルボロン酸および7-アルコキシインドイル-3-ボロネートを鈴木-宮浦クロスカップリング条件下順次作用させ、ピロール環3位と4位に2種類芳香族置換基を持つ鍵中間体を合成した。鍵中間体からピロール2位と5位にフェニル酢酸部位を配したディクティオデンドリン前駆体への変換は、Steglich等のプルプロンの合成を参考に行った。まず、鍵中間体のエステル基を脱炭酸し、次いでインドール窒素の保護基を電子吸引性の保護基へと付く換え、ピロール2,5位へ、ジアゾフェニル酢酸から発生させたカルベノイドを付加させた。基本骨格を完成し、残り数工程を残す段階まで合成が進行したが、ディクティオデンドリンまでの変換、並びに、収率、再現性共に悪い保護基の脱着反応の条件検討は課題である。
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