今年度は、まず既に収集済みの1996-2006年の家計パネルデータの分析を開始した。その結果、土地売買の市場が存在し、比較的活発であること、この10年の間に稲の反収が2割から3割程度増加したこと、このサンプル地域において稲の高収量品種(HYV)が急速に進んだことなどが見出された。また、本研究で新たに実施するよていである「環境保全型稲作技術導入」の実験の準備のため、12月にはインドを訪問し、まずインド統計研究所において共同研究者のP.Banik氏と詳細な打ち合わせを行った。その結果、実験的に導入する技術の候補として、堆肥の自家製造しそれを稲作に利用すること、牛の尿を農薬の代替品として利用するという、インドの他の地域での土着の技術を、東インドに導入すること、小規模な池を作ることによって、非灌漑稲作地域における乾季の稲作の水供給の安定を図ること、などが特定された。また、試験的に導入するべき地域についても、西ベンガル州の農村を数箇所訪問し、候補村を特定した。ただし、その候補村においては、今年は例外的な降雨と上流地域でのダムの放流による洪水被害のため、多くの農家で稲の収穫ができなかったことが判明したので、当初予定していた新技術導入前の稲の収量その他の予備的家計調査の実施が不可能であったため、これら追加的家計調査は1年後に実施した。 また、東インドとの比較という観点から、インド中央部に位置するハイデラバードに数日間滞在し、周辺の農村を訪問した。
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