研究概要 |
農業・農村分野における社会的課題は、農業担い手問題、耕作放棄地問題、野生獣害問題、それに農業・農村の環境問題の四つである。本年度は、非営利団体の活動とそれらネットワーク的な活動が、これら四つの課題解決に向け有効に機能しうるかどうかについて、主として「野生獣害対策」と環境問題に関わる「里山管理」を対象に考察を行った。具体的には、里山管理に取り組むNPOと野生獣害対策に取り組むNPOに現地調査の対象を絞り、東京都、北海道、それに沖縄県で聴き取り調査を実施した。里山管理を事業として掲げるNPO法人の全国比率は、内閣府のNPO法人データベースによると、わずか0.5%程度にすぎず、また野生獣害対策を事業とするそれは、0.05%にも達しない状況である。しかし、現地調査の結果、里山管理や野生獣害防止が当該地域住民にとって身近で困った社会的課題となっており、かつNPOがその社会的課題解決の受け皿となることができるなら、里山管理や野生獣害対策を事業とするNPOは、今後、増加する可能性があることが明らかとなった。 NPO法人は全国に約35,000存在する。内閣府のNPO法人データベースに基づき、「農」に関わる事業を展開するNPO法人の全国比率を計算すると2.8%と非常に少ない。地域別では、北陸が5.3%で最も高く、関東・東海・近畿といった都市的地域で2.3%と低い比率になっている。農に関わる事業を、「地域振興」「食の安全」「都市農村交流」「バイオマス」に細分してみてみると、それぞれ42%、45%、27%、34%の比率(重複有)となり、食の安全を事業として掲げるNPO法人の多いことが明らかとなる。ここで、「里山管理」は「都市農村交流」に、「野生獣害対策」は「地域振興」に含まれている。
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