本年度の研究成果は、大きくは次の二点である。第一に、前年度および今年度の調査成果から、米国における小規模農場に対する支援システムの構造と論理を明らかにした。米国では、公的部門と民間の非営利部門とが供給する競争的助成金を含む資金を活用し、NPOおよび大学エクステンションが相互に協力しながら支援主体として小規模農場こ対する支援を行っている。このような支援システムが形成されているのは、米国の混合福祉経済社会としての社会的背景がある。第二に、このような米国の支援システムとの比較から、日本において地域農業支援のワンフロアーに向けて取り組むべき事項として次の三点を指摘した。第一は、財務状態と支援活動の規模のバランスをとることの必要性である。予算則模に照らしながら、支援対象間の平等性の確保と特定の支援対象への重点的な活動とのバランスを再検討し、支援活動に充当される資金・人員の規模に照らして支援対象の絞り込み等が必要となる。第二は、支援活動の一環として経済事業を行う場合、固定費の大小により事業が非採算化した時の撒退の可否が規定されることである。このことは、大規模な固定費を派生するような助成金による経済事業の危険性を意味する。第三は、より多くの人材を組織員として誘引する組織デザインについて、支援対象である生産者組織での取り組みが望まれることである。すなわち、生産者農家の世帯主だけが組織員として活動するのではなく、非農家や農村女性、高齢者がそれぞれに活動できる場を提供し、さらに、関連する企業との積極的な協力関係の形成が効果し的である。ただし、そのためには何らかのメリットを提供できる仕組みが必要となる。この点で、NPOという組織形態をとり、一定の信用度を確保しつつ、経済事業を合わせ行うことが有効となる。 以上の成果については、国内外の学会等での発表および学会誌等での公表を行っている。
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