戦後の日本における食生活の変化は、主に「食生活の洋風化・高級化」といわれる食事メニューの変化と、それにやや遅れて進展した「食の外部化」の2っに整理され、これら「食生活の洋風化・高級化」と「食の外部化」は、ともに食料自給率を低下させる要因であると考えられる。一方、「健康」は正常財であり、正の所得効果が期待されることから、所得の増加とともに健康志向が強まり、自給率を維持あるいは向上させる要因として、今後、さらに重要性を増していくとする見方がある。日本人の食生活と食料自給率との関係は、これら2つの拮抗する食生活の変化によって決まると考えられるが、現状では全体でどうなのかよくわからないままである。このような疑問に答えるために、国産食料に対する消費者の志向が食料需要に与える影響を明らかにすることが本研究の目的である。研究目的に沿って、最終年度である平成20年度は、以下の観点から研究成果をとりまとめた。 1.「食生活の洋風化・高級化」「食の外部化」など、戦後の食生活の変化は家族形態の変化とともに進展してきた点を検討するため、食生活の変化に世帯属性(年齢と世帯規模)の変化がどの程度寄与しているのか、需要体系分析などから計量的に明らかにした。 2.「健康食材」といわれる生鮮野菜や果物の家計購入量が減少傾向を示している点について、需要体系分析などからその要因を計量的に明らかにした。 3.上記1と2をふまえて、消費者の健康志向と食料消費との関係について、需要体系分析などから両者の関係を計量的に捉えた。その際、次の点に本研究の独自性を指摘できる。 (1)従来の「嗜好」の変化に所得効果を加えて、新たに「志向」の変化を定義した。これにより、従来の需要分析では捉え切れていない部分にも分析の光を当てた。 (2)食料を国産食料と輸入食料の2つに分離して分析したことで、国産食料への志向を明確に捉えることができた。
|