研究概要 |
本研究の19年度は,仙台市の市民食料備蓄の全容を明らかにすべく,仙台市5000世帯に「宮城県関連地震に対応する地域食料のあり方についての緊急アンケート調査」と題するアンケートを送付し,大規模な調査を実施した。有効サンプルは1811,不在数の152を除いた実質回収率は37.4%となった。 主な分析結果と今後の展望は以下の通りである。 (1)非常用食料と飲料水を備蓄している世帯の割合は、それぞれ36.2%と43.9%。(2)非常用食料や飲料水を備蓄している世帯の備蓄量は、非常食で2.9日分/家族、水で16リットル/家族となった。(3)ライフラインが途絶えた状況下において,冷蔵庫等の家庭内在庫でどれだけの期間を過ごせるかの設問に対しては,平均では3日以上となった。非常用食料や飲料水の備蓄は依然として不十分であるが,通常の家庭内在庫で何とかなるだとうとする市民意識が表れている。(4)クロス集計で見ると,一戸建て世帯の備蓄率が高いことから,物理的な制約(保管場所等)が低い備蓄率の要因になっていると考えられる。(5)また,予想されたように,地震への関心度や防災意識が高いほど備蓄率が高いことが明らかになった。公的備蓄の存在を知っていた世帯の方が備蓄率は高く,公的備蓄に依存しようとするモラルハザードはないと結論付けられる。(6)また,災害時には地域での助け合いや協力が必要不可欠だが,普段の近所付き合いの程度が強いほど地域での防災活動に期待できると回答する傾向がみられた。(7)今後は,食料備蓄を規定している要因を特定し,世帯(個人),地域,公的備蓄の役割を明確にし,流通在庫等を含んだ地域フードシステムを活かした防災対策を検討する必要がある。
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