上述の研究課題に対し、平成19年度は、3つの課題の中の第1課題と第3課題を中心に調査研究を行った。課題1では、奈良県下の近郷野菜の流通で古くから利用されている「ならRTC」を事例として調査研究をおこなった結果、以下の成果を得られた。当初、「ならRTC」の利用は、順調に拡大していくかに思えたが、昭和60年以降、利用数は年々減少し、また多くの紛失の発生から近年は利用が低迷し、管理運営も厳しい状況にある。ただ、利用が、近年低迷しているのは、段ボール容器の方が優れているからではない。「ならRTC」は、容器コスト、作業性(収穫、包装、荷造り)、鮮度保持(蘇生、予冷)、水切りなどの点からも非常に優れている。利用が減少し低迷しているのは、第1に、小売構造の変化にともなう物流システムの変化に、利用システムが対応できなくなってきている。第2に、現在の利用システムでは、小売業者に「ならRTC」の管理回収責任(義務)がないため、そのことが紛失を増大させる大きな要因となっている。第3に、小売業からの回収の困難さが、仲卸に取扱を敬遠させる傾向を発生させている、などの理由によることが明らかになった。次に課題3については、ヨーロッパ諸国の青果物流通におけるRTC利用と情報システムについてヨーロッパ諸国(8カ国)の視察調査を実施し多くの新知見を得ることができた。ヨーロッパ諸国では大規模小売業の青果物流通では、RTCでの流通が基本となっており、さらにRTCでのディスプレイによる物流効率化が大きいこと。販売は、計量販売であるが、その形態が3タイプあること。また、巨大小売業が旧社会主義諸国に積極的に進出していることも明らかになった。ただし、卸売市場からの仕入れに依存している小売業では、段ボール容器や木箱形態の流通が多く、卸売市場中心の流通であるわが国でのRTCを導入するためには、さらに調査する必要がある。
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