本研究では、中山間地域における「小さな自治」(地域自治組織)の機能と性格の解明を行い、今後の発展条件を明らかにすることを課題とした。3年目の本年度は、濃密地域における事例分析(広島県安芸高田市)の補足を行い、さらに事例収集(いままで把握した東日本および西日本の「小さな自治」に関して)を追加した。それにより、「小さな自治」の存在形態の多様性がさらに明らになった。 また、本年度は最終年度でもあり、今までの研究の総括を行い、次の諸点を明らかにした。(1)中山間地域における「小さな自治」が、特に西日本を中心に広範に存在し、多様な活動をおこなっている。(2)これらの設立の契機は、市町村合併と関連していることが多く、合併による「大きな団体」自治に対して「小さな住民自治」が志向されている。(3)中山間地域の「小さな自治」の特質として、(1)特産品開発や店舗経営等の経済活動を含め多面的総合的な活動を行っていること、(2)「小さな自治」と集落は代替関係にあり、集落の守りの自治に対して「小さな自治」は攻めの自治を担当していることがあげられる。(4)多くの「小さな自治」組織は、任意組織であり、また法人格を持つ場合にはNPO法人が選択されているが、それは、組織の性格からして必ずしも適合的でない。 以上の研究の結果、中山間地域再生のひとつの方向性として、このような「小さな自治」の設立の促進・安定化が必要であることが明らかになった。それを促進する政策として、多面的な活動を許容する制度、集落活動との両立を保証する制度、そして特に「小さな自治」の性格に対応した新たな法人格が必要であることが提起できる。その具体化が、諸外国の事例との比較を含めて、今後に残された研究課題である。
|