当年度は、昨年度までの条件不利農地の維持と耕作放棄の抑制という中山間地域等直接支払制度の主たる目的に対しての政策実施効果を計るための数量的分析を踏まえた上で、現地実態、各種の農業者への調査や、国民世論の動向をも考慮し、制度に対する総合的な評価結果を検討した。その結果、条件不利農地の維持と耕作放棄の抑制という制度の第1の目的について計量的に計測できる効果に加えて、地域紐帯の強化という第2の効果についても、大きな効力を発揮していると結論づけることができる。それらの反映でもあろうが、制度に対する国民的合意という点でも、他の農林水産政策と比較しても傑出した内容を有していると言うことができる。また、研究期間最終年度の当年度においては、幾つかの共通点をもつ他の農林水産政策、特に森林整備地域活動支援交付金制度、離島漁業再生支援交付金制度との比較検討も試みた。その結果、特に離島漁業再生支援交付金制度とは多くの類似点を見出すことができたが、それは制度設計の内容においてというよりは、現地の制度への対応の内容においてである。そこでは、制度を活用して地域の再生を試みる英知について、立地条件などの違いを超えた共通性を見ることができた。そのような観点からも制度が地域に根付きつつあると評価できる。また、離島漁業再生支援交付金制度においても国民世論の動向という点では肯定的な評価が多い。これは中山間地域等直接支払制度とともに、地域を限定しているという点が反映していると考えられる。一方で、森林整備地域活動支援交付金制度に対する評価は必ずしも高くないということも明らかになった。
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